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紫娘〜朗らかに潤す〜

2020.09.16


「ゆうくん、朗らかに潤してあげる。」

 

ひと夏の恋の物語か?でも彼女の名前を知らない。ここで出会い、僕らは語り合った。ほんのひと時だったかもしれないけど、今でも僕の中に・・・彼女はいる。

 

また今月も売り上げが立たない。所長に怒鳴られ、逃げるようにオフィスを飛び出た。市外から国道を南下するも、ふとハンドルを切り国道をそれる。なんだか引き込まれるような感覚だった。僕は初めてこの町にやってきた。畑が目立ち、緑が繁るこの町は田野町というらしい。僕はすぐさま携帯電話でこの町のことを調べてみた。農業と誘致企業を中心に、都市化が進んできた歴史のある町のようで、都市化が進んできてはいるが、あふれる自然と見事に調和している。神秘的な気分にしてくれる町だな。なんだかジブリの世界に迷い込んだ気分だった。日豊本線沿いを進む。特急でもないのに、僕の車はあっという間に、取り残される。ちょいと車道を外れ、丘を登れば畑道、対向車が来たならば取り返しがつかない道ではあるが、すぐにその心配は無用と気付く。フロントガラスは二色に染まっていたのだ。淡い緑と澄み切った青。山沿いの路肩に、ちょうど車を止められそうな場所があったので、僕は停車し、その地に足を下ろした。すると、「お兄さん!」と一人の少女が話しかけてきた。僕はビクンと効果音を放つかほどにのけぞる。彼女はその様相を、満面に喜色を湛え見つめている。彼女は、「こっち」と僕を手招きしながら先に進んだ。従う従わないとかじゃなくて、僕は操られるように、彼女に付いて行った。畑の道を進むと、樹々が茂る丘の向いに腰を掛けるにちょうどいい土手があった。彼女はそこに腰を下ろし、僕も続いて座った。真夏の太陽から、丘の樹々が僕らを守ってくれた。それに、緑っていうものは、清々しい心地にしてくれる不思議なパワーを秘めている。彼女は僕に「名前はなんていの?」と。僕はフルネームで答えるも、彼女は名前部分だけ引っ張って、しかもその名前をまた変形して、「ゆうくん」と呼んだ。

 

「ゆうくん、5月に苗を植えてね、こんなにまで育ったんだ!そろそろ掘り起こしだよ、ワクワクするね!」

 

名前ってのは呼ばないでも会話は成立する。「名前はなんていうの?」って、僕から聞いてもよかったが、機を逃した感があったし、聞いちゃいけない気がしてた。彼女は紫色のワンピースを着ていた。だから僕は、彼女のこと、心の中で「紫の娘」と呼んだ。紫の娘はまた話し始めた。

 

「切り干し大根の生産量が日本一の町なんだけどね。芋も負けてないよ!特にこの畑は凄いんだ!見て見て!葉っぱが、のびのびしているでしょ?農薬を使っていないんだ!だからほら、虫食い虫食い!あ〜あ、そこは猿に荒らされている〜〜〜きゃー!」と。

 

確かに、生茂る緑には力を感じた。思いっきり、力強く広げた葉は、たくましくも、美しい。虫に食われた葉も、獣に荒らされた畑も、なんだか優雅で、楽しく思えた。もちろん、自然に起きていることではない。だれかの手が施されている。この畑に込めた人の愛も同時に感じた。

 

紫の娘と僕は、身の上のことは何も語らなかった。ただ、芋の葉がハートに似ているとか、葉の幼虫が蝶になるとこうなるだとか、どうでもいい話ばかりをした。そのどうでもいい話に、僕は徐々に元気をもらう。どうでもいいことにこそ意味を感じられる、そんな空間だった。

 

彼女は立ち上がった。そして「ゆうくん、朗らかに潤してあげる!」と、僕に言い残し、畑へ向かって走る。「待ってよ!」と後を追うが、紫の娘の姿は緑の中に、溶け込むように消えていった。それから僕は何度もその畑に顔を出したが、もう紫の娘は僕の前に姿を表さなかった。芋の葉がなくなってからは、その場を訪れることをやめた。

 

一年後。僕は居酒屋のカウンターで一人、酔いしれていた。所長の腹いせを酒で誤魔化す。すると、酔いが吹っ飛ぶ不思議な言葉が店内に響き渡る。「朗らかに潤すをロックで!」すぐに僕は、その声を発した主の席を見入る。すると、その主は、焼酎を一口、鼻歌を歌うかの要領で微笑んでいた。僕も同じものを注文した。

 

翌日、僕は渡邊酒造場に電話をした。まるで馬鹿げた話だけど、僕はあったことを全て、赤裸々に語った。すると電話の声は、あの紫の娘のように穏やかな声で、僕に言った。

 

「愛込めて、芋を育てて仕込んでますからね。こんなことあっても不思議じゃありませんよ!」

 

僕は蔵に呼ばれた。畑を案内してもらい、焼酎の仕込みも見せてもらった。なにより驚きだったのは、あの畑が、この渡邊酒造場さんの畑であったこと。そして、あの畑で「紫娘」というお芋を育てていたということ。そのお芋の成育時期が、ちょうど彼女と出会った時期だったということ。

 

「自家栽培に拘って焼酎を仕込んでまして。「朗らかに潤す」って銘柄があるんですけど、これは僕と弟の名前から命名した焼酎なんですよね。で、この焼酎、投票にて原料のお芋を決めるんです。2018年の投票結果の末、2018年は紫芋系「紫娘」を植え、そのお芋で仕込んだ焼酎が2019年の「朗らかに潤す」なんです!」

 

蔵の方は、まだ残っているからと、グラスに注いだ「朗らかに潤す2019」を僕に手渡した。

 

「まずは香り・・・紫芋ならではの上品さを醸すも、香ばしさがそれを包み込み香りの立ち上がりは抑えめ。キラキラとした若さもあるが、どこか清楚な雰囲気をも感じてしまう。口に含むと・・・はしゃぎだす!あの紫娘のように、キャッキャッと笑うタッチがある。クリーミーな印象もあるが、ここでも香ばしさがしっかりと出ており、キレをしっかりと与える。芋の力強さ、あの悠々と手を広げた葉っぱのような朗らかさ、力強くも雄大な味わいが、今の僕を見事に潤してくれた。」

 

「ありがとう御座います!9月でしたっけ?また紫娘、投票していいですか?」

 

すると蔵の方は答えた。

 

「はい!でも・・・違う子にも、会いたくないですか?」

 

この蔵には、朗らかに潤す何かがいる。

 

 

酒名:朗らかに潤す2019
蔵元:渡邊酒造場@宮崎県宮崎市田野町
芋:紫娘
麹:米麹(白)
蒸留;常圧蒸留
特徴:投票芋仕込み

 

 

それでは、皆様の愛のご来店、心よりお待ちしております♪

 

 

 

 

 

スペースマジック株式会社
代表取締役(兼 とりぞの店主)
奥園侑亮(ZONO)

 

家を飛び出た19歳夏、身銭が底をつき始まったホームレス生活!その末、新宿西口で屋台を営むに至る。一期一会に杯交わす日々、商売の基礎を学ぶ。後に更生、実家山口県に戻り→自宅浪人→高知大入学→某IT会社入社→サラリーマンとなり東京に舞い戻る。しかし求める世界は違った。2011年、飲食業界へ転移、その一年後、某鳥料理屋の店長に抜擢される!更には焼酎きき酒師の資格を取得『焼酎教室』を設立し200名の生徒を築く!そして…2014年4月起業、スペースマジック株式会社設立、六本木に81席の居酒屋『九州鳥酒とりぞの』をオープン!そして2017年6月には念願の2店舗目『炎上鳥菜とりぞの』を出店!が、2018年7月、全権を委ねた店長に裏切られ閉店、12月には火災事故にて本館も失う・・・2019年、全てを喪失したZONOは、起死回生に向けて立ち上がる!そして今、『焼酎ユーチューバーZONO』として前代未聞な挑戦が始まる!

 

 

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